お悩みの内容(主訴)
2年前に結婚し、年齢の事もあったのですぐにクリニックで不妊治療を開始した。
FSHの値が20程度、AMHも1.5を切る状態だったのですぐに体外受精に移行したが、採卵をしても空胞が目立ち、採卵数のわりに胚盤胞になる数が少なく移植をしても結果が出ない状態であった。主人の精子の数値も良いとは言えず、クリニックで補中益気湯を処方されたが数値の改善は見られなかった。
年齢に対する焦りもあり、鍼灸やサプリを試してみたところ、鍼灸院の先生から漢方の併用を勧められ、天明堂薬局を紹介された。主人も漢方が合っているのかを聞いてみたいということで、夫婦で漢方相談の予約をとった。
主訴以外の症状
奥様
・イライラする ・頭痛(側頭部) ・不眠(睡眠時間5時間) ・疲労感 ・口内炎 ・眼精疲労 ・目の周りがピクピクする ・強い生理痛 ・経血量の減少 ・経血に塊がある ・多夢 ・軟便
ご主人様
・頭痛(側頭部) ・性欲低下 ・疲労感 ・鬱っぽい ・怒りっぽい ・食欲旺盛 ・喉の詰まり感 ・手足の熱感 ・不眠(睡眠時間5時間、中途覚醒2回)
改善案
奥様は経血に塊があり、経血量も減ってきていることから瘀血と血虚があることは明白でした。そのため、補血活血(血を補いながら血流を良くする)をベースに年齢的な事を考慮して鹿茸や亀板などの動物性生薬を併用しました。ご主人様は一見すると元気があるような印象でしたが、精子の数値が良くないため、奥様と同様の動物系生薬をご提案させていただきました。
そしてなにより問題なのが、二人とも明らかに睡眠不足である点です。女性の場合であれば慢性的に睡眠時間が6時間になると卵胞刺激ホルモンの値が20%程度下がり、男性であれば慢性的に睡眠不足だと睾丸が小さくなるという報告があります。男女ともに睡眠不足は生殖能力を大きく低下させてしまいます。40代の妊活において睡眠不足は大問題であるため、睡眠は最低でも7時間はとるようにしていただきました。そしてご主人様に関しては睡眠の質を良くする漢方薬をご提案させていただきました。
奥様が一か月35,000円程度、ご主人様が25,000円程度と合計すると少し高額にはなってしまいましたが、体質の状況・課題・妊娠へのプロセスを説明の上、ご納得していただきました。
経過・予後
4週間後
採卵をしましたが移植に使える受精卵は凍結できませんでした。ただこれは、漢方を服用して間もなくに行った採卵だったため、漢方の影響がでていないと判断しました。次回の採卵の相談をいつにするか、というご相談の中でお客様自身も少し妊活に疲れを感じているという事だったので4か月くらい休んで、また採卵をする流れとなりました。
8週間後
【奥様】
経血の塊がなくなり、生理痛もほぼなし、色も明るくなってきました。頭痛、生理前の胸の張り、目の周りのピクピクもなくなり、疲労感も軽くなって以前よりも体調が良くなりました。
【ご主人様】
性欲が高まったという感じはしませんでした。射精した時に以前は水っぽい感じだったが、最近はドロッとした感じになったと思う、との事でした。以前よりも視界が広がったような感覚があり、イライラは減ってきたそうです。
28週間後
採卵の結果、5日目胚盤胞を2つ凍結することができ、一回目の移植で陽性反応がでました。まさか漢方開始後1回目の移植で結果が出るとは思わなかったため、しばらくは信じられなかったそうです。
この時点で、ご主人さまは睡眠を良くする漢方のみに減薬をしました。奥様も心拍を確認できたあたりから悪阻が強くなってきたため、漢方の服用は中止しました。
2年後
ご夫婦とお子さんが来店してくださいました。私が「金額ちょっと高かったですよね…」と話すと、「先生、何言ってるの?体調も良くなって、この子も授かって、主人も生活を見直せたんですよ。安いじゃないですか。」と言ってくださいました。現在は、お風邪やちょっとした体調不良の時に当店をご利用くださっています。
睡眠と生殖能力はかなり強い関係性があります。どんなに高度な医療やサプリ、漢方を服用していても睡眠を疎かにしては良い結果は望めないかもしれません。人間の基本である睡眠を今一度見直すことが、体調の改善につながり妊活にも好影響を与えた良い例だと思います。