お悩みの内容(主訴)
2年前に結婚し、年齢の事もあったのですぐにクリニックで不妊治療を開始した。
40代後半から管理職となり、多忙な日々を送っている。
50歳になったころから明らかな更年期障害を感じるようになってきた。
火照り、多汗にも困っていたが、イライラや煩躁が特に強くなり、部下のミスに対して辛らつな言葉を浴びせてしまう事も増えていた。もともと怒りっぽい性格ではあったが、さらにひどくなっていた。家庭でも主人の言動にイライラしてしまい、感情が爆発するとシンクに調理器具を投げつけてしまう事もあった。
主人からは「自分の意にそぐわない事や自分のルールに当てはまらない人を攻撃するのは良くない」と注意された。言われていることに納得はしているものの、何かあると自分の中の攻撃性を抑えることが出来ない。心療内科を検討もしたが、管理職である自分が精神薬を飲む事は怖くてできない、と感じ、漢方で改善を試みたいと思った。
主訴以外の症状
・不眠 ・頭痛 ・頬の赤み ・高血圧 ・中性脂肪↑ ・LDL↑ ・便秘 ・肩こり・舌が赤い
改善案
この方は更年期障害による陰虚陽亢とストレス過多による肝火上炎が重なっているタイプでした。
陰陽学において女性は陰に属します。そのため、更年期に入り卵巣機能が低下すると陰が低下して相対的に陽が高まってきます。心と体が陽の特性になるため、火照り・イライラ・高血圧・顔の赤み・頭痛・便秘などの症状が起きていました。
さらにストレス過多により気の巡りが悪くなり、気が煮詰まって火に化けていました。精神的に昂ぶりが強くなるため、感情の抑制が効かなくなりました。
この方には陰陽のバランスを整える漢方薬、肝の働きを良くしつつ清熱をする漢方薬の2種類を服用していただきました。食事は香辛料・揚げ物は一切控えて、夏野菜を中心としたサラダを3食必ず食べていただきました。さらに仕事終わりはまっすぐ帰宅することなく、公園に立ち寄り1~2周散歩をしてから帰宅する事を約束し、仕事中も1時間に1回は席を立ち、階段の上り下りをしていただきました。
経過・予後
4週間後
吊り上がっていた目尻は穏やかに下がり、声のトーンも落ち着いていました。「少し落ち着いた印象がありますね」という私の問いに「周りからもそういう風に言ってくれる人が増えました」と答えてくれました。
とはいえ、更年期障害特有の火照りや寝汗、煩躁が完全になくなったわけではなく、もう少し継続していく事、体質を改善するにはそれなりに月日が必要であることを説明し、同じ処方を継続していただきました。
12週間後
ご主人様とご来店されました。ご主人様からは冗談交じりに「僕の命が救われました(笑)。以前はいつ刃物を向けられてもおかしくないような状態だったので。」と言われました。
家庭に穏やかな雰囲気が包まれつつあることを感じたので、減薬を提案しましたが、お客様自身が同量の処方の継続を希望されたため、同じ量の処方を継続し、今も続いています。
女性にとって更年期障害は避けられないものです。ホルモンバランスの乱れからくる心身の不調は自分でもコントロールしきれません。さらに現代社会特有のストレス、元からの性格が合わさると自分でも信じられないような人格が出てくることもあります。心と体は一対です。心の調子が悪い時は体を整えることを試してみると良いでしょう。