お悩みの内容(主訴)
長年、逆流性食道炎を患っている。就寝時に横になると胃がムカムカしてきて、横になっていることできず眠れない。酷い時は就寝中に眼が覚めて、吐き気を感じる事もあり、椅子に座りながら寝る事もある。
朝食は胃のムカつき・食欲不振のためコーヒーだけを飲んでいる。昼食は普通に食べているが、夕食は仕事のストレス発散を目的に暴飲暴食をしてしまう。特に揚げ物やコッテリとした食事を食べないと満足感を得られず、スーパーのコロッケや唐揚げは欠かせない。
最近では肌荒れもひどくなり、体重も増加の一途になっている。不眠・胃腸障害・ダイエットの相談をしたいと思い漢方薬を試すことにした。
主訴以外の症状
・眩暈 ・頭重感 ・悪臭便 ・イライラ ・胃もたれ ・吐き気 ・倦怠感
改善案
今回のケースは漢方的に胃気不和(いきふわ)が考えられました。漢方において「胃」には「受納・腐熟・降濁」という働きがあると考えます。これは現代でいう「食べ物を納める・簡単な消化をする・下に降ろす」という意味になります。
胃が疲れていたり、胃の働きを超えるような暴飲暴食をすると胃が正常に働かなくなります。すると「受納できない・腐熟できない・降濁できない」となり、これが胃もたれ・吐き気などの原因となります。
本来、胃の気は下降するはずですが、胃の働きが乱れる事で逆に上昇してしまうことを、胃気上逆と言います。胃気上逆は逆流性食道炎の原因となります。今回のケースでは消化を助ける漢方薬と胃の働きを良くする漢方薬をご提案させていただきました。
そして食事のメニュー・食べ方・量を変えていただきました。朝と昼は1日活動するための必要なエネルギーであることを伝え、温かく消化の良い食事をしっかりと食べてもらいました。逆に夕食は『夜は寝るだけ』と説得し、腹6分目に抑えていただきました。内容も大根など消化を助ける食材を取り入れつつ、煮物など油をあまり使わない調理をお願いいたしました。もちろん揚げ物・香辛料の使い過ぎは禁止です。また夕食をたくさん食べる事がストレス発散方法になっているため、スポーツクラブに入会してもらい、ダイエットも兼ねて帰宅前に軽く運動していただくようにしました。
経過・予後
2週間後、食事のとり方を見直したところすぐに睡眠の質の変化を感じるようになりました。翌朝すっきりと眼が覚めるようになり、朝ごはんを美味しく食べられるようになりました。2週間程度でかなり改善されていたので、胃の働きを良くする漢方薬を血流が良くなる漢方薬に変更し、ダイエットの促進を狙いました。
4週間後、夕食後の胃のムカつきがなくなり寝るのが楽しみになりました。パジャマや寝具などもこだわり、良質な睡眠をとることに意識が高まってきたそうです。間食や爆食いもなくなり、体重も2キロ減りました。当初は頭重感や眩暈、口の苦味があったことを伝えると「そういえば、そんなこともありましたね」と、本人でも気が付かない体質の改善がみられました。
不眠は何か体調の不良が原因と思われがちですが、食事の内容や量が原因で不眠になる事もあります。この場合の不眠は夕食の取り方を変えるだけで改善することも多く、不眠の中では比較的軽度なものと言えます。しかし、今回の例のように「夕食が三食の中で一番ボリュームが多い」と言う人は意外と多いものです。カウンセリングの中で睡眠の質を良くする食事のとり方もぜひ取り入れてみてください。