体質虚弱な人の次の症状
不眠、不安感、肩こり、息切れ、動悸、口渇、便秘
天王補心丹は滋養安神薬に分類される漢方薬です。
滋養安神薬は陰血不足により心身が陽(興奮、熱、上昇、軽い、外向きなど)の状態になっている時に使用される漢方薬です。
陰血の不足は慢性病や食生活の乱れ、極端な感情の乱れ(怒りなど)により発生しやすいですが、特に発生しやすい原因が女性の更年期です。
陰陽学において女性は「陰」に属するため、卵巣機能の急激な低下は「腎陰の急激な低下」とも考えられます。腎陰は心火を相克(抑制)するため、腎陰が不足すると心火を抑制することができません。その結果、心火が昂り、女性の更年期生障害特有の「火照り、イライラ、汗、便秘、不眠」などの症状を起こします。
天王補心丹は地黄を多く含むことで腎陰を補い、心火を鎮めます。 天門冬・麦門冬は心陰を補い、丹参・当帰は補血安神の作用があります。 また柏子仁・酸棗仁も安神作用があり、遠志は心腎のバランスを調整します。 全体的に積極的に陰を補い、陽を鎮める事で陰陽のバランスを整える働きがある漢方薬です。
陰が不足し陽に傾いている人は、寝つきが悪く、眠りも浅く、夢が多く、物忘れが目立ち、焦燥感が起こりやすくなります。 少しでも症状に当てはまる人は体質を整える意味でも服用すると良いでしょう。
虚弱体質で血色の悪い人の次の諸症、貧血、不眠症
気血双補剤は気虚と血虚が同時に起こる気血両虚に用いられます。 帰脾湯は特に心血虚と脾気虚が同時にみられる体質にお勧めです。 漢方・中医学において五臓の一つ【心】は神を蔵すと考えられています。心血虚になると心神を滋養することが出来ず、心神不安を起こします。 心神不安の状態になると驚きやすい、動悸、物忘れ、不眠などの特徴が現れます。 五臓の一つ【脾】は気血生化の源と呼ばれ、食事から気血を生成する重要な臓です。 脾は現代における胃腸に近いイメージです。脾が弱い人は食欲がなく、お腹が張りやすく、泥状便、疲れやすい、顔色が萎黄色などの特徴があります。 つまり帰脾湯は脾が弱く気血が虚弱していて心を養えない状態にお勧めです。 日本人は冷飲冷食や生ものやサラダ、クーラーによる冷やしすぎ、ストレスなど脾が弱くなる生活をしている人が多いです。 そういう意味でも日本人になじみのある漢方薬の一つと言っても良いでしょう。
帰脾湯は人参・黄耆・白朮・甘草・大棗・生姜と脾を強化する生薬を多く含み、さらに当帰・茯苓・酸棗仁・竜眼肉で補血をしつつ養心安神をします。遠志は心と腎のバランスを上手にとります。さらに木香が気の巡りを整えてストレスによる不調を緩和します。 総じて脾を丈夫にしながら気血を補い弱った心を養うことで不安や不眠を改善していく処方と言えるでしょう。
貧血、不眠症、精神不安、神経症
加味帰脾湯は気血双補剤に分類されます。
加味帰脾湯は帰脾湯に柴胡・山梔子が加わった処方です。
帰脾湯をベースにしているため、基本的には心脾気血両虚に使用されます。
心脾気血両虚の人は、脾が弱いために食事から気血を生成する力が弱く、結果的に心を正常に機能させる気血が不足した状態です。
心脾気血両虚の人は
加味帰脾湯は帰脾湯に疏肝理気作用のある柴胡と清熱作用のある山梔子が加わったことにより、心煩(落ち着きがない)・イライラを鎮めます。 普段は疲れていて不安感や不眠傾向にあるが、ストレスなどが加わるとすぐに怒りっぽくなる人に良いでしょう。
体力中等度以下で,心身が疲れ,精神不安,不眠などがあるものの次の諸症:不眠症,神経症
酸棗仁湯は滋養安神薬に分類される漢方薬です。
肝血が不足したことで虚火が生じたことによる不眠にお勧めです。
生理による出血やストレス、パソコン仕事など、肝血が極端に消耗すると肝血不足が起きます。肝血が不足すると虚火が生じ、その虚火は肝にとって子にあたる心に移ります。その結果、心神不寧の状態となり不眠や煩躁、多夢、動悸などを起こします。
ストレス社会・スマホの利用、デスクワークなど現代日本人は肝血を不足しやすい生活をしています。そのため、酸棗仁湯は現代人の不眠によく利用される処方の一つとして有名です。
肝血不足が起きている人は他にも
酸棗仁湯は養肝血・安心神の酸棗仁が主薬です。川芎は肝血を養うと同時に流れを良くし、酸棗仁をサポートします。茯苓も寧心安神作用があり酸棗仁を補助します。知母には滋陰清熱・除煩することでイライラを抑えます。甘草は諸薬を調整しバランスをとります。 酸棗仁湯はイライラを抑えつつも肝血を増やし精神を安定させて不眠を改善する素晴らしい処方です。