おそらく多くの人は不眠を改善するには効能効果に「不眠」と記載されている漢方薬を選ぶことが多いと思います。むしろ効能効果に「不眠」と記載されていない漢方薬を勧められたら…、間違えた薬を勧められたと思う人もいるかもしれません。
しかし、漢方・中医学というものを勉強すればするほど、効能効果に「不眠」と書かれていない漢方薬でも十分に不眠改善に役立つことが分かります。今回はいくつかの例を挙げてご紹介いたします。
漢方の不眠の原因の一つに「胃気不和(いきふわ)」というものがあります。
これは砕いて書けば「胃が弱っていたり、食べ過ぎて、胃の機能が正常に行われていない状態」と言えます。
胃の正常な働きは「受納・腐熟・降濁」。つまり「食べ物を納めて、簡単な消化をし、下に降ろす」というものです。胃が疲れていたり、食べ過ぎると胃の機能が十分に働かず、「吐き気、胃のむかつき、息苦しさ」を感じるようになります。
夕食を食べ過ぎてしまい、就寝してもお腹が苦しくて眠れなかった、という経験はだれしも一度はありますよね。このような場合は、消化を助ける漢方薬が不眠改善の柱になることがあります。
もちろん、夕飯を食べ過ぎない、消化の良い食べ物を意識することが大切ですが、帰宅してすぐに夕食、その後すぐに就寝するなどの場合には消化を助ける漢方が睡眠に好影響を与えることがあります。
漢方の不眠の原因の一つに「心腎不交(しんじんふこう)」というものがあります。
これは「腎水が不足することで心火を抑えることができなくなった状態」と言えます。腎は生殖なども含むため、特に女性(陰)の更年期は腎水が不足する時期と考えます。
腎水が不足するため心火が抑えられない、これが女性の更年期に見られるイライラ・ホットフラッシュ・動悸・多汗・高血圧・不眠につながります。このような場合は、心火を鎮め腎水を補う漢方薬が不眠改善に役立つことがあります。
夏場など屋外での活動時間が長くなると体内に熱がこもってしまうことがあります。
良い睡眠は脳や深部の体温が下がることが必要となるため、寝室に入っても体が火照っているような状態では質の良い睡眠をとることは難しくなります。
このような場合、一部の風邪薬が不眠改善に役立つことがあります。風邪は厳密には風熱邪と風寒邪に分けられ、風熱邪には辛涼解表薬、風寒邪には辛温解表薬を使用します。夏の日差しによる熱邪を冷ます目的で銀翹散のような辛涼解表薬を使用することは、熱中症対策や暑さによる不眠に役立つことがあります。
便秘の不眠の原因になることが考えられます。
大便は温かいので、便通が良い状態とは体の熱が外に放出される状態です。便秘をすると熱を放出することができにくくなるため、体の内部に熱がこもってしまい肌荒れやイライラ、不眠の原因になることが考えられます。
このような場合、便通を改善する漢方薬が不眠に役立つことがあります。一般的に便通を改善する漢方薬は涼性の生薬から作られていることも多いため、夏場の暑さと便秘が重なっているような状況であれば、効能に「不眠」と書かれていなくても、役立つことが大いにあります。
このように、不眠の原因は多種多様であり、その改善方法も様々です。効能効果に「不眠」と書かれていなくても、体質を改善することが良い睡眠につながることがあります。漢方薬を服用する際、自己判断ではなく専門家に相談のうえ服用することがとても大切です。ぜひ、体質を改善して、良い睡眠生活を過ごしましょう。