「春先は変な人が出る」「木の芽が芽吹くときは気をつけなさい」という言葉を聞いたことはありますか?
昔から春になると気持ちが昂りやすく、イライラしたり軽率な行動をしたり、我慢ができなくなる傾向があります。これは「感情」が「春」という季節の影響を大きく受けていることにほかなりません。
陰陽学において春は秋冬と続いた陰の季節から春夏の陽の季節への転換点と考えられています。そのため、暗く冷たい日々から暖かく明るい日々へと移るため、心と体が急激に「陽」の状態になっていきます。陽には動く、明るい、温かい、上昇、軽い、外向き、などの特徴があります。陽の特徴により心は動きやすく、軽快で、エネルギーを放出したくなってきます。春になるとワクワクしてきたり、新しい事に挑戦したくなる人も多いでしょう。しかし、春の陽気は良い影響のみならず、怒る・イライラ・キレる・ソワソワ・高圧的態度など、悪い方向に出てしまう人も多いものです。
また五行学においても春は怒りを感じやすい季節と考えられています。五臓の一つ肝には【疏泄を主る】という働きがあり、この働きが情緒を安定させたり、自律神経系の安定につながると考えられています。肝は春になると不調になり、疏泄が乱れ、情緒が不安定になります。肝の五志(起きやすい感情)は【怒】と考えられている点からも、春は怒る・イライラ・キレる・ソワソワ・高圧的態度が目立つと考えられます。
陰陽学的にも五行学的にも春はメンタルが不調になり【怒】の感情になりがちなのは間違いないと言えます。つまり春は【怒】の感情により、冷静さを失い衝動的で感情がぶつかりやすい季節なのです。そこに輪をかけてしまうのが何を隠そう、【睡眠不足】になります。
皆さんは十分な睡眠をとれた日、寝不足だった日、どちらが心の安定を感じますか?
【眠れなければ眠れないほど、心が落ち着いて安定している】という人はいないと思います。ほとんどの人は十分な睡眠がとれない日はイライラしやすくカッとなり、攻撃的になってしまいます。この原因は脳の中の偏桃体と前頭前皮質のバランスが関係しています。偏桃体は怒りの感情を生む原始的な部位で、前頭前皮質は合理性や社会性、倫理性などをコントロールする部位になります。この二つはアクセルとブレーキに例えられることがあります。
例えば目の前に腹が立つ人がいるとします。その人を「腹が立ったから殴った」と、なるのはいかにも偏桃体が過剰に活動している状態です。そんなことをしては犯罪やトラブルになってしまいます。そこで重要なのが前頭前皮質の活動です。前頭前皮質が十分に機能している人は殴りたい人が目の前にいたとしても【殴って良いのかな?メリットあるのかな?社会的に許されるのかな?倫理的に良いのかな?】などを瞬時に計算して偏桃体の衝動にブレーキをかけます。忍耐強くキレにくい人は感情のアクセル(偏桃体)を踏みすぎず、ブレーキ(前頭前皮質)が上手に機能している人です。
しかし、睡眠不足が続くとこのバランスは崩壊します。睡眠不足の人は偏桃体が過活動になる事が分かっていて、さらに前頭前皮質は機能が低下することが分かっています。これはアクセルが軽くてブレーキが効きにくい状態であり、人間の感情はまるで暴走車のようになってしまいます。そんな精神状態で良好な人間関係は築けるでしょうか?感情的にぶつかるばかりではいい人間関係を築くことは難しいでしょう。これが睡眠不足の人が人間関係で失敗する大きな原因の一つと考えられる理由です。
漢方の世界においてメンタルを整えるためには【何時に寝ているか】も重要と考えます。特に23時~3時は胆・肝の時間と考えられていて、肝と胆の修復を行う大切な時間です。肝は情緒を安定させる、胆は決断を主る、と考えられているので、この時間に寝ている人は情緒が安定して物事を決断しやすくなります。
最低でも7時間の睡眠時間を目指すことを考えると、22時30分には寝室に行き、起床は6時くらいを目標にすると良いでしょう。
春になるとメンタルの相談はグッと増えてきます。イライラしやすい・落ち込みやすい、驚きやすい、などなど…、その症状は様々ですが多くの人に共通しているのが【睡眠不足】です。
十分かつ適切な時間の睡眠は情緒を安定させ、春の陽気の影響も相まって前向きで快活な毎日を過ごせるはずです。そのためにも、睡眠の質を良くする漢方はとてもお勧めです。自分の体質に合った漢方薬で、今年の春を元気に過ごせるようにしましょう。