夫婦で妊活の話し合いをしていたら、いつの間にか喧嘩になってしまった。
漢方カウンセリングをしているとそんなお話をされる方も少なくありません。
夫婦にとって大切な妊活が喧嘩の原因になってしまうと、妊活に対するストレスも高まってしまうため、可能な限り喧嘩は避けたいところです。
しかし、もしこの喧嘩の原因に「睡眠不足」があるとしたら…、皆さんはどう思われますか?
今回のコラムは「睡眠不足が夫婦喧嘩の原因になる」そして、「夫婦の話し合いにお勧めの時間帯」について書いてみたいと思います。
皆さんは睡眠不足の日、やけにイライラしたり集中力が落ちたり、思考力が落ちて合理的な思考ができなくなることはありませんか?
この理由は脳の中の偏桃体と前頭前皮質のバランスが大きく関係しています。偏桃体は怒りの感情を生む原始的な部位で、睡眠不足になると活動が活発になります。かたや前頭前皮質は合理性や社会性、倫理性などに関わっています。
簡単な表現をすれば、偏桃体が感情のアクセルであれば前頭前皮質にはブレーキのような役割があります。衝動的にカッと怒りの感情が生まれても、その怒りをぶつける事が合理的か、社会的にOKか、倫理的に問題ないか、などを瞬時に計算しブレーキをかけています。
つまり質の良い十分な時間の睡眠がとれている人は怒りの感情が芽生えにくく、怒りを感じてもそれを衝動的にぶつける事はありません。逆を言えば、夫婦ともに睡眠不足だと感情のぶつけ合いになりがちで、建設的な話し合いが難しくなります。大切な未来の相談だからこそ、日頃から十分な睡眠をとり冷静な精神で話し合いをしたいところです。
先程、夫婦での妊活相談で喧嘩になるのは睡眠不足により脳のアクセルである偏桃体が過活動を起こしてしまうから、と書きました。しかし、アクセルを踏みすぎなくても、ブレーキが壊れてしまっては同じことが起こります。つまり前頭前皮質の機能が低下すれば、同じように怒りやすくなってしまいます。
ここでポイントになるのがアミロイドβです。アミロイドβとは脳内で作られるタンパク質であり、日々活動していると蓄積されていきます。アミロイドβは主に深いノンレム睡眠中に脳から排出されているため、睡眠不足の人や睡眠の質が悪い人はアミロイドβの処理が上手くいかない傾向があります。アミロイドβは認知症の原因になる事でも有名です。高齢者は自然と深いノンレム睡眠が短くなっていくため、アミロイドβが溜まりやすく、結果的に認知症リスクが高まります。
さてこのアミロイドβは日中活動していると脳に蓄積されていきますが、特に前頭前皮質に溜まりやすいことが分かっています。つまり、夜間は朝よりもアミロイドβが前頭前皮質に溜まっているため、前頭前皮質の機能が低下して偏桃体の衝動性に対しブレーキが効きにくい状態となります。ブレーキが効きにくい状態では合理的で社会的で倫理的な話し合いは難しくなります。
では、夫婦で話し合いをするにはどの時間帯が良いのか?それはしっかりと寝た日の朝です。質の良い十分な時間の睡眠をとることでアミロイドβは脳内から掃除され、さらに偏桃体の興奮も抑えることができます。この脳の状態であれば、互いに冷静で合理的な判断ができるようになるでしょう。
可能であれば公園などを散歩しながら話し合いをするのがお勧めです。東から昇る太陽を浴びながら軽く運動することでセロトニンと呼ばれるハッピーホルモンの分泌が高まり、心身共に爽快な状態で話し合いができるでしょう。
睡眠不足は脳のアクセルを踏みやすくなり、夜の脳はブレーキが壊れやすくなります。
脳のアクセルとブレーキを上手に調節するためにも十分な睡眠をとり、脳の疲労が一番軽い朝に体を動かしながら相談することが、前向きで建設的な話し合いのポイントになります。
大切な夫婦の話し合いを上手に進めるためにも睡眠から見直してみるのも良いでしょう。