理想の睡眠時間とは?

理想の睡眠時間とは?

日本人の睡眠時間の短さは世界的にも顕著と言われています。

OECD(経済協力開発機構)がまとめた「世界における時間の使い方(Time use across the world)」に関する調査報告によると日本人の睡眠時間は33か国の中で最下位です。日本では睡眠時間が6時間を切る割合は男女ともに約4割にもなります。睡眠時間が6時間を切ると循環器系のトラブル増加、精神疾患リスク、生殖能力の低下、肥満リスク、免疫力の低下、集中力の低下、疲労感増加、血圧上昇、認知症リスク、糖尿病リスクなどが様々な研究によって報告されています。つまり日本人の4割は睡眠不足による様々なリスクにさらされながら生活していることになります。

そんなことを書くと「自分はショートスリーパー。4時間寝ればいつも元気」と言う人もいますが…、それに該当する日本人はかなりレアな存在です。そもそもショートスリーパーとは6時間未満の睡眠でも十分に健康を維持できる人の事を指します。

しかし、ショートスリーパーの人数は非常に少ないと考えられており、おおよそ人口の約1%未満とも言われています。そのため、多くのショートスリーパーは「自称ショートスリーパー」の可能性が高く、言い方を変えれば「十分な睡眠によって得られる『体調が良い自分』を知らない人」とも言えます。

つまり、多くの日本人は睡眠時間の短さによる「不調」を感じながら生活していることになります。そしてその状態が「普通の状態」と思い込んでいる人が多いのも事実です。毎日「不調の状態で過ごす」、これはとても辛い事です。

最適な睡眠時間とは?

様々な研究や資料に目を通すと、7時間前後の睡眠時間の人が、生活習慣病やうつ病の発症および死亡に至る危険性が最も低くなると考えられます。そのため、成人は6~8時間が適正睡眠時間と考えて良いでしょう。

しかし年齢や生活環境を考慮すると、多少のばらつきもあります。季節的な観点では、夏に比べて冬は10~40分程度、睡眠時間が長くなります。また加齢は睡眠時間が短くなる大きな要因であり、加齢すればするほど睡眠時間は短くなってきます。そのため、「7時間寝るのが良い!」と固定化せず、「7時間から±30分くらい」と幅を持たせることも大切です。

睡眠時間=ベッドにいる時間ではない

漢方相談の際、「何時に寝ていますか?」と質問すると「23時に寝室に行き、7時に起きているので、7時間は寝ています」とおっしゃるお客様がいらっしゃいます。しかし、これは「睡眠時間」でなく「寝室にいる時間」です。一般的に寝室に入ってから寝付くまでの時間は30分から1時間とも言われているため、よほどベッドに入ってすぐに寝る人でなければ、寝室にいる時間は睡眠時間+30分程度が理想です。

つまり、7時間睡眠と仮定すれば、寝室にいる時間は最低でも7時間30分となります。また、ベッドに入った時間の内、実際に寝ている時間を睡眠効率と呼びます。10代の睡眠効率はおよそ90%とも言われますが、80代にもなると70%程度まで低下します。睡眠効率・入眠までの時間、これらを考慮すると寝室にいる時間は8時間くらいを目安にすると良いと思います。

睡眠時間を確保してスケジュールを組もう

睡眠は人類が進化の過程で失うことのない重要な時間です。睡眠中は敵に襲われる、移動もできない、食材を確保することもできない時間であり、進化の過程で失っても良いはずですが、すべての動物が睡眠を失うことはありません。これはすなわち、睡眠はそれらのリスクと天秤にかけても、より必要性があるからに違いありません。

にもかかわらず、多くの日本人は睡眠時間を削りながら生きています。これは残念ながら自ら動物としての健康を損なう生き方をしている人が多い事になります。そこで提案したいのが睡眠時間を確保したうえでの1日のタイムスケジュールを組む事です。

やりたい事がある・ゆっくり過ごしたい・リラックスする時間が欲しいなど、お気持ちは分かりますが、それで心身の健康を損なっていては本末転倒です。1日のタイムスケジュールを組むことで、「無駄な時間・無駄な事」を省くこともできるかもしれません。

「寝室滞在時間8時間 睡眠時間7時間前後」を意識した生活をしてみましょう。

一覧に戻る