「寝る子は育つ」おそらく皆さんも一度は耳にしたことがある言葉だと思います。漢方の理論においても子の成長を促すために睡眠を十分にとることはとても重要と考えています。そのカギは五臓の中の一つ「腎」にあります。
漢方において「腎」には
・骨を主り、髄を生じ、脳に通じる。
・精を蔵し、成長、発育、生殖を主る。
という考え方があります。
つまり腎が丈夫な人ほど、骨格の成長や脳の発育、生殖の発達が活性化されると考えられています。腎の盛衰は女性であれば7の倍数、男性であれば8の倍数で、女性の腎のピークは28歳、男性は32歳となっています。それ以降は男女ともに腎は穏やかに衰退していきます。つまり子供の時に腎を大切にする生活スタイルはその人の一生の基礎を作ると言っても過言ではないのです。
漢方において1日のスケジュールと臓は密接な関係があります。例えば太陽が昇り高い位置にある日中は「陽の時間」です。陽には活動、上昇、温かい、軽い、明るいなどの特徴があります。五臓の中で陽の特徴を持つのが「心」です。「心」は精神活動や血液循環に大きな役割があり、まさに日中の活動を支える臓と言えます。太陽が沈み、夕方になり、あたりが暗くなってくるとそこからは「陰の時間」となります。陰には静止、下降、寒い、重い、暗いなどの特徴があります。五臓の中で陰の特徴を持つのが「腎」です。腎は先ほどもかいたように成長や発育、生殖の発達に重要な臓であるため、腎が活動する時間を阻害すると腎の働きは低下してしまいます。
では腎にとって好ましくない過ごし方とはどのよう過ごし方でしょうか?腎は陰に属していることからも分かるように夜の過ごし方は『暗く静かな場所で、静止する(落ち着く、寝る)』事を好みます。逆を言えば夜の時間にもかかわらず昼間のような活動をしていると腎は本来の働きを発揮できません。そのような生活は積み重なると体や脳の成長・発育が停滞すると考えています。そのため、心身の発育が望まれる幼少期は夜更かしをせずしっかりと寝る事が成長を促すうえで大切になってきます。
また夜更かしは子供の感情の安定にも関係しています。漢方において心は陽に属し、腎は陰に属しています。心と腎は互いにバランスをとっていますが、寝不足などにより腎が弱ってしまうと、心が強くなってしまいます。心には「火」の性質があるため、心が強くなりすぎると、落ち着きがない、興奮、攻撃性が高まるなどを招くことがあります。ちょっとしたことで怒ってしまったり、大声で叫んだり、感情の抑えがきかないときは「しっかりと眠れているか?」を確認することも重要です。
子供の成長において腎を大切にすることはとても重要です。そのためにも以下の点に気をつけましょう。
子の成長は全ての親の願いです。しかし、親の生活スタイルに子が合わせている場合も珍しくなく、知らず知らずのうちに成長を妨げるような生活習慣に陥っている事もあります。「寝る子は育つ」。子の健やかな成長のためにも就寝時間を守る習慣を作るようにしましょう。